【ネタバレなし】『オールド』怖い?グロい?家族と、時間と、どう向き合うか【レビュー】
*ジャンル:ホラー
*キャスト:ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、ルーファス・シーウェル、アレックス・ウルフ、トーマシン・マッケンジー、エンベス・デイヴィッツ、アビー・リー・カーショウ、ケン・レオン
*監督:M・ナイト・シャマラン
*脚本:M・ナイト・シャマラン
*公開:2021年08月
*評価 (10段階):5
*ネタバレ:無
家族で余暇を楽しむためにやってきた広大なビーチ。
楽しい時間も束の間、急成長する子供に、老いていく人々。
『シックス・センス』でおなじみのM・ナイト・シャマラン監督による、新感覚心理ホラー!
引用元:映画『オールド』日本版最新予告<8月27日(金)日本公開> – YouTube
観た!
うーーん、僕はあまりハマらなかったかも。
終盤の展開や、随所に見られる家族愛的な要素はキレイで素敵でした。
ただそれ以上に、細かい違和感が気になったかなぁ。
あと少しテンポが遅く、冗長な印象も受けてしまったかも。
以下から、少し掘り下げて書かせていただきます。
新規性のある設定から理解しやすいオチで、キレイなアウトラインを描く
本作は一応ホラー映画ですが、物理的な恐怖というよりかは心理的な恐怖を描いている作品です。
そのため、一般的なホラーに言われる怖い・グロいみたいなことは殆どありません。
あるビーチで過ごしていたら急速に老いて(成長して)いくという設定。
これは結構新規性があって面白かったですね。
オチも分かりやすいというか、「明確に、こう」っていうオチがあるので親切設計マルですね。
また、オチまでの流れも変に難しくすることもなく、最後までキレイに、丁寧に流れを作ってくれます。
家族愛や心理描写、時間に対する向き合い方を再考できる
また、家族愛的な要素が非常に強い。
これはほぼ確実に、作り手もそこを意識しているだろうなというくらい強いです。
その作る側の想いや熱意が作品を通してひしひしと伝わってくるので、やっぱりそこは再考する良いきっかけになりましたね。
自分が、子としての、家族の中での在り方や振る舞い。また、自分が大人になって家庭を持つ。
そうした時に、次は一人のパートナーとして、一人の親として、どう在るべきか、どう振る舞うべきか。
普段、中々立ち止まって考えない内容だからこそ、再考のきっかけとして与えられるのは素晴らしいと思います。
同様のことを、時間に対する向き合い方にも言えます。
作中のキャラクターは心の準備も出来ないまま、急速に時間が経過する空間に置いていかれる。
その中で模索しながらも、老いに対して、成長に対してどう向き合うか、どう理解するかを考えていく訳ですね。
立ち返って、本作を観ている私達。
幸運にも、急速に時間が経過するような空間で生きることもなく、心の準備も自分次第では如何ようにも出来る。
そんな中で本作を観て、マイナスに捉えがちな「老い」に対して、どう肯定的に生きるか。
そうしたことを考えさせてくれる描写もあり、非常に勉強になりました。
ストーリーは少し冗長で飽きやすいかも
裏表ですが、複雑な展開が無い分少し冗長な印象を受けたかな。
特にこれといった展開もなく、予告通りのストーリーが進みます。
心理的な恐怖という意味で、ドキドキする抑揚やメリハリも期待してしまいましたが、そうした展開も特にはなく。
もう少し何かあるか、全体をシュッと収めてくれたら嬉しかったな。
主要人物の説明が少なくて混乱しやすい
本作の主要人物は、かくかくしかじかあり、不可解な現象に巻き込まれていきます。
ただ、そこまでの間に、エキストラレベルの人も含めると非常に多くの人物が登場するんですね。
その中で、ちょいちょい主要人物の説明を入れていくので、今後どの人に注目するべきかが分かりにくかったかも。
その後に改めて、登場人物に焦点を当ててもらえたら良かったのですが、そのまま本題に突入するので、緊迫した頃に、「あれ?これ誰だっけ?」「これってこの人?いや違う、こっちがこの人か。」みたいになっちゃう。
登場人物確認のために、まぁまぁ巻き戻したりしたので、少しストーリーに集中しにくかったかなぁ。
異常事態にパニクるが冷静に分析するチグハグさ
本作の内容、子は急速に成長し、大人は老いていくという、どう考えても異常すぎて気味の悪い事態。
登場人物は当然パニクるんですけど、ひとしきりパニクった後に、当事者たちが冷静に且つ的確に考察し始めるんですよね。
なんかそのチグハグさが気になったというか。
個人的には、
- 異常事態でもパニクらず、冷静に考察する
- 異常事態にパニクり、考察もできない
のどっちかに揃えてもらいたかったのですが、内容的に前者は難しいと思うんです。
なので、異常事態にパニクって、どうするどうするみたいなところで、例えば瓦礫が一つ崩れて気付きを得る。みたいな、「気付きベース」で話しを進めてほしかったかなぁ。
自分の子供がデカくなった!自分が老いてきている!なにこれ、どういうこと!?意味わからないよ!そんなことあり得る!?
から、少しして、
この現象がこうなるのは本来何年かかるところだが、今は何分程度しか経っていない、つまりここでの1分は何年に当たるだろう。その原因はきっとこれで、故にアレをするとこうなってしまうと説明がつく。
みたいに言われても、「えぇ〜、さっきのテンションどこ〜?」ってなっちゃうんですよね。
何かを見て気付きを得るとかじゃなくて、手持ちの情報から登場人物が全部答えを導き出しちゃう。
なんかその差に違和感があってすごく気になっちゃったな。私が細かすぎるだけなのかな。
身体的な老いと精神的な老い、20年眠っていた幼稚園児はアメリカの位置を指差せるか
タイトルは例え話ですが。。
上の話にも通ずるところですが、本作は身体的な老いは分かりやすく進行しますが精神的な老い(成長)は明確には描かれません。
そのこと自体さほど重要ではないのですが、細かい私が気になっちゃったところが「知識量が増える」という現象。例えば、
- 2歳の子が高い位置にある食べ物を取りたいと思っている。
- その子が心身共に、急速に成長し、15歳になった。
- 高い位置にある食べ物を取る方法として、近くにある木の棒でつついて取った。
これって内面的な成長を仮定すれば違和感がないんですけど、この15歳の男の子に「アメリカの位置を指差してください」って言って、アメリカの位置を指差させるかっていうと無理だと思うんですよ。
それって知識としての有無の問題で、内面的な成長は関係ないような気がして。
それと同じようなことが作中で描写されていて、「その知識はいつ習得したの。。」って。
いやぁ、自分でも細かいことは分かってるんですが。どうしても気になっちゃって。
フィクションはフィクションでいい、ただ物事は噛み合っていて欲しい
前回の記事、『テリファー』で、フィクションの登場人物に自分の願望を押し付けるべきではない
みたいなことを書きました。
その直後でこの細かい指摘なんですけど、なんていうか、フィクションであっても一般的な物事は噛み合っていて欲しいんですよね。
サスペンス映画の殺人鬼が、なんの予兆も無しに空を飛んで欲しくはないし、普通の小学生がなんの設定もなく、成人男性との拳のタイマンでボコスカにやって欲しくはない。
そういう、なんか、作品内の「普通」の枠組みからはみ出て欲しくないんですよ。
もちろん、空を飛ぶ特殊能力を得た殺人鬼が空を飛んでもいいし、超人的な小学生が成人男性をボコスカやってもいいんですよ。
ただ、創作であることを理由に何でもありにして欲しくないんですよね。
本作は、その線引きでちょっと気になってしまった。そんな感じですかね。
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ではまた~。
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